競馬予想と聞けば、多くの人が馬の血統や過去の戦績、調教タイムといったデータを思い浮かべるだろう。
しかし、ここに一人、全く異なる視点から勝負の行方を見抜こうとするベテラン記者がいる。
その名は、松原義信。
彼の予想スタイルは、馬ではなく「人」を見るという異色のものだ。
本記事では、競馬記者として長年現場を取材し続けてきた松原義信氏のキャリアと、その根底にある信念に迫る。
なぜ今、彼の「人を見る予想」が再び注目を集めているのか。
その理由を探ることで、競馬の新たな魅力が見えてくるかもしれない。
「人を見る予想」の原点
松原氏の独特な予想スタイルは、一朝一夕に形成されたものではない。
そこには、長年の記者経験と、彼が出会ってきた人々からの影響が深く刻まれている。
新聞記者時代の現場主義
松原氏は大阪大学経済学部を卒業後、新聞社「スポーツ関西」に入社。
競馬記者としてのキャリアをスタートさせた。
彼が何よりも重視したのは、現場の空気を感じることだった。
厩舎に足を運び、関係者の生の声に耳を傾ける。
その積み重ねが、後に「人を見る」という独自の視点へと繋がっていく。
名記者たちの影響と「読む予想」へのこだわり
松原氏が影響を受けた人物として、競馬評論家・井崎脩五郎氏と、元上司であった名記者・岡部氏の名が挙げられる。
井崎氏の自由な発想は、データ一辺倒ではない競馬の面白さを教えた。
そして岡部氏からは、「読む予想」──つまり、単なる勝ち馬を当てるだけでなく、その背景にあるストーリーや人間模様を読者に伝えることの重要性を学んだ。
この「読む予想」へのこだわりが、松原氏の骨太な文章スタイルの礎となっている。
関西馬の台頭を見続けた90年代の現場経験
1990年代は、関西馬が中央競馬を席巻した時代だった。
ビワハヤヒデ、ナリタブライアン、マヤノトップガンといった歴史的名馬たちがターフを沸かせた。
松原氏はその快進撃を、記者として最前線で見届けた。
強い馬の背後には、必ず優れたホースマンたちの存在がある。
この時代の経験は、馬だけでなく、それを取り巻く「人」の重要性を改めて彼に認識させた。
騎手・調教師・馬主──“人間模様”から読む勝敗
松原氏の「人を見る予想」は、具体的にどのような点に注目するのだろうか。
彼は、騎手、調教師、そして時には馬主といった、競馬を構成する様々な人々の動きから、勝負の深層を読み解こうとする。
騎手の発言と行動に宿る本音
騎手はレースの鍵を握る重要な存在だ。
松原氏は、レース前後の騎手のコメントはもちろん、些細な行動や表情の変化も見逃さない。
強気な発言の裏に隠された不安、あるいは控えめな言葉とは裏腹な自信。
そうした本音のサインを読み取ることが、的中に繋がるケースは少なくない。
例えば、以下のような点に注目するという。
- 乗り替わりの経緯: なぜその騎手が騎乗することになったのか。陣営の期待度は?
- 過去の相性: その騎手と馬、あるいはその騎手と調教師の過去の連携実績。
- レース中のコメント: レース後のコメントだけでなく、追い切り後の感触など、レースに至るまでの発言の変化。
調教師の癖・性格・戦略をどう読むか
調教師は、競走馬を管理・育成するプロフェッショナルだ。
彼らの個性や戦略もまた、レース結果を左右する大きな要因となる。
松原氏は、各調教師の仕上げのパターンや、大一番に向けた勝負気配を長年の経験から分析する。
「あの調教師は、叩き2走目で仕上げてくるタイプだ」
「このレースに向けて、明らかに普段とは違う調整をしている」
こうした情報は、一朝一夕で得られるものではない。
長年にわたる取材と観察眼が、調教師の“癖”を見抜くことを可能にするのだ。
馬主の出走パターンや投資動向にも注目
さらに松原氏は、馬主の動向にも目を配る。
特に、個人馬主の場合、その馬主がどのレースに重きを置いているか、どのようなローテーションを好むかといった傾向が見られることがある。
また、クラブ法人馬主であれば、その年の期待馬や勝負をかけている馬の存在が、出走パターンから透けて見えることもあるという。
馬主の“勝負気配”を感じ取ることも、予想の重要なファクターとなるのだ。
現地取材と人脈の力
松原氏の予想を支えるのは、長年の記者活動で培われた「現場主義」と、そこから生まれた広範な人脈だ。
情報は、時に活字やデータだけでは伝わってこない。
厩舎通いで得た“現場の空気感”
フリーランスとなった今でも、松原氏は自ら厩舎に足を運ぶことを厭わない。
調教師や厩務員と直接言葉を交わし、馬の状態をその目で確かめる。
そうして得られる“現場の空気感”こそが、彼の予想の精度を高める源泉となっている。
馬の毛ヅヤ、歩様、スタッフの表情。
些細な変化も見逃さない観察眼が、そこでは生きる。
LINEオープンチャットでの交流と若手支援
ベテランでありながら、新しい情報収集の形も積極的に取り入れている。
LINEオープンチャットなどを通じて、若い競馬ファンと交流し、彼らの疑問に答えることもあるという。
こうした柔軟な姿勢は、新たな視点を得る機会にも繋がっている。
また、若手ファンに競馬の奥深さを伝える役割も担っていると言えるだろう。
こうした現代的な情報収集と並行して、一部の熱心な競馬ファンは、万馬券的中に特化した情報を求めて、暴露王のような競馬情報サイトで有力情報をゲットし、高配当を目指すこともあるようだ。
このようなサイトでは、一般には出回りにくい情報や、人気薄の激走馬に関する情報が提供されることもあり、競馬予想の新たな視点を与えてくれるかもしれない。
府中の居酒屋で得られる「リアルな声」
松原氏にとって、府中競馬場近くの馴染みの居酒屋は、単なる癒しの場ではない。
そこでは、競馬を愛する常連ファンたちと、忌憚のない意見交換が行われる。
ファンならではの鋭い指摘や、一般には出回らない情報に触れることも少なくないという。
こうした「リアルな声」もまた、彼の予想を形作る上で欠かせない要素なのだ。
松原流「読み」の美学
松原義信の競馬予想は、単に勝ち馬を当てることだけを目的としていない。
そこには、彼独自の「読み」の美学が存在する。
感情を抑えた骨太な文章スタイル
彼の書く記事は、簡潔で骨太、そして感情を抑えた文体が特徴だ。
そこには、いたずらに読者の射幸心を煽るのではなく、冷静な分析と事実に基づいた情報を提供したいという思いが込められている。
この実直な語り口が、長年にわたり多くの読者からの信頼を集めてきた理由だろう。
勝ち馬予想より、“勝負に向き合う姿勢”を重視
もちろん、予想家である以上、勝ち馬を当てることは重要だ。
しかし松原氏は、それ以上に、競走馬や関係者が勝負にどう向き合っているかという点に重きを置く。
馬券が的中するか否かだけでなく、そのレースに至るまでの過程や、そこで繰り広げられる人間ドラマを読み解くこと。
それこそが、競馬の醍醐味だと考えている。
「競馬は物語」──馬券以上の価値を語る
松原氏の持論は、シンプルかつ深遠だ。
「競馬は“賭け事”じゃない、“物語”だ」
一頭の競走馬の背後には、生産者、馬主、調教師、騎手、厩務員など、多くの人々の想いが交錯している。
その馬がターフを駆け抜ける姿は、まさに一つの物語。
馬券という結果だけでなく、その物語全体を味わうことこそが、競馬の持つ本当の価値なのだと、松原氏は語る。
まとめ
松原義信氏の「人を見る予想」は、データやセオリーだけでは捉えきれない競馬の深層に光を当てる。
彼のスタイルは、長年の現場取材と人間観察に裏打ちされた、まさに職人芸と言えるだろう。
- 松原義信の予想スタイルの本質: 馬だけでなく、騎手・調教師・馬主といった「人」の動きや心理を読み解き、勝負の行方を探る。
- “人を見る”ことで開ける競馬の新しい扉: データ一辺倒ではない、人間ドラマとしての競馬の魅力を再発見できる。
- ベテラン記者が伝えたい、競馬の奥深さと面白さ: 馬券の勝ち負けを超えた、競馬という「物語」を楽しむ視点。
情報が溢れる現代において、松原氏のような独自の視点を持つ予想家の存在は、ますます貴重になっている。
彼の言葉に耳を傾けることで、私たちは競馬の新たな扉を開き、その奥深い世界をより一層楽しむことができるはずだ。