日本全国を旅しながら800社以上の神社を参拝してきた私、佐藤美和です。
もともとは東京生まれですが、現代の神社文化を深く学ぶために島根県松江市へ移住し、出雲大社をはじめとする地域密着型の研究を続けています。

SNSをはじめとするソーシャルメディアの動向や若者文化と神道の関わりをテーマに博士論文を執筆し、神社本庁や地方の神社関係者への取材・研究にも情熱を注いできました。
その中でも特に印象的なのは、若手神職が抱く「伝統を守りたい」という思いと「新しい時代を切り開きたい」という意欲が同居している姿です。

本記事では、神社本庁の若手神職のリアルな声に焦点を当て、これからの神社運営や文化継承をどのように展望しているのかを探ってみたいと思います。
少子高齢化や地域コミュニティの変化、さらにはグローバル化にデジタル化まで、激動の社会を生きる新世代の本音を通じて、日本の伝統文化の未来を一緒に考えていきましょう。


若手神職の役割と現状

若手神職が置かれている社会的背景

神社は日本人の暮らしや文化を象徴する存在として長い歴史を重ねてきました。
しかし、現代社会では人口減少や地域コミュニティの希薄化が進み、祭礼や地域行事への参加者が減少する傾向があります。
若手神職は、この「変化する社会」と「継承すべき伝統」のはざまで、大きなプレッシャーを感じながらも新しい取り組みを模索しているのです。

こうした課題は深刻ですが、同時に「若手だからこそ自由な発想で動きやすい」という一面もあります。
現代的な手法やメディアを活用し、神社の魅力を多様な形で伝えようとする姿勢は、SNS時代を生きる私たちにも共感しやすいですよね。

神社本庁における若手神職の位置づけ

神社本庁は全国の多くの神社を統括する組織ですが、その内部にも世代交代が進みつつあります。
若手神職は、保守的と思われがちな組織の中で以下のような役割を担っています。

  1. 次世代リーダーとしての教育や研修を受け、伝統的作法や神道の知識を身につける
  2. 新しい視点を組織に取り入れ、SNS活用や海外対応などのイノベーションを起こす
  3. 地域活動や文化事業を積極的に企画し、神社の多様な可能性を広げる

若手が増えることで、内部に活気が生まれ、組織としても変化や挑戦がしやすくなるとの声も聞かれます。
私がインタビューした若手神職の方々も「若者ならではの発想を神職として形にしたい」という強い意志を語っていました。


インタビュー:若手神職が語る本音

伝統と革新のはざまで

若手神職の多くが口にするのが「伝統と革新の両立は本当に難しい」ということです。
「神社は神聖な場所であり、悠久の歴史と地域の信仰を背負っている。
それを軽々しく変えられない一方で、現代人の感覚に合わせた形に進化させることも大切。
ジレンマを抱えながらも、その調和点を探る毎日です」——こんな言葉を何度も耳にしました。

実際に、伝統的な装束を着けながらオンライン配信を行う神職や、若者向けにアニメやポップカルチャーとのコラボを試みる神職など、試行錯誤は多種多様です。
私自身も博士課程時代に、SNSでバズを狙った神社プロモーションについて研究しましたが、従来の枠を越えたアイデアに対する拒否感がまだまだ根強いと実感しています。

地域社会との連携と課題

地域に根ざしてこそ神社の価値が発揮される、というのは若手神職も強く認識しています。
一方で、少子高齢化や地域行事のマンネリ化によって、担い手や参加者の確保が難しくなっている現実も否めません。

覚えておきたいポイント
┗ 地域住民との対話の場を増やし、参拝意欲を高める取り組み
┗ 祭礼の新しい形(音楽フェスと掛け合わせるなど)の試行錯誤
┗ 子どもや若者が楽しめる「体験型」の神社イベントの企画
┗ 女性や海外からの参拝者も受け入れやすい環境づくり

若手神職は「日常生活のすぐそばに神社がある」という関係を復活させたいと語ります。
私も島根県で地域のお祭りに参加した際、地元の高校生や若手神職が連携して企画した演奏会が開催され、地域の人々との距離感が一気に縮まった瞬間を目撃しました。
そうした成功例はまだ少ないですが、一歩ずつ新しい風を吹き込もうとしているのが、今の若手神職なのだと感じています。


神社の未来像と新世代の展望

持続可能な神社運営モデル

社会構造が変化する中で、神社をどのように維持・発展させるかは喫緊の課題です。
収益構造が十分でない神社も多く、寄付金や祭礼収入だけでは限界がある場合も珍しくありません。
そうした状況を打破しようと、若手神職は以下のような取り組みを始めています。

私が出雲大社文化研究所で聞いた話でも、「海外からの参拝需要は今後さらに高まる」という見方が強いです。
若手神職は、国際的な神社コミュニケーションを積極的に行いながら、日本の文化や精神性を広めようと意気込んでいました。

若手神職の挑戦事例

ここで、私が取材した若手神職の活動事例を簡単にまとめてみましょう。

取り組み事例ポイント成果・課題
SNS活用(Instagram, TikTokなど)神社の日常や祭礼の様子を映像で発信し、若者との接点を増やすフォロワーは増加するが批判的意見への対応も必要
地域コラボイベントの開催音楽やアート、地元食材を組み合わせた祭りを企画し、地元の高校生や大学生も巻き込む参加者が増え地域活性化につながる一方、伝統を壊すとの声も出る
オンライン祈祷・デジタル参拝遠方からでも祈祷を依頼できるシステムを構築し、海外からの参拝希望にも応じる利便性は高いが、神社の神聖さとの両立をどう保つかが課題
若手神職ネットワーク結成同世代の神職同士が情報交換し、成功事例や失敗事例をシェアするコミュニティを形成刺激を得られる一方で、組織の垣根を越えた活動への理解が必要

新しい試みに挑戦するときには、当然ですが批判的な意見も少なくありません。
それでも「今、やらなければ次の世代に神社を引き継げない」という使命感が若手神職を突き動かしているように感じます。


よくある質問(FAQ)

Q: 若手神職はどのような経緯で神職になったのですか?

A: 家系による継承が一般的とされていましたが、最近では大学で神道や歴史を学んだことをきっかけに神職を志す方や、他業界からの転職組も増えています。
多様な背景を持つ若者が新たな風を吹き込んでいるのです。

Q: 若手神職はSNSやオンラインをどの程度活用していますか?

A: 神社や行事の魅力を発信する目的で、InstagramやYouTube、さらにはTikTokなどを利用している方もいます。
配信の際は、神聖なイメージを損なわないよう試行錯誤しながら、動画や写真を通じて地域の魅力を伝えています。

Q: 神社本庁と独立系の神社との違いは何ですか?

A: 神社本庁は全国の神社を統括し、研修や人事などを一括して行う組織です。
一方、独立系の神社は独自の運営方針を持ち、若手神職の研修環境や活動の自由度も異なります。
所属によっては学びの機会やネットワークが変わるため、若手神職の視点で見てもそれぞれ一長一短があるようです。

Q: 若手神職が取り組んでいる地域活動にはどのようなものがありますか?

A: 祭礼や地域行事だけでなく、子ども向けの神道学習プログラムや災害時の支援活動、地域産業との連携イベントなど、多岐にわたります。
地域住民が「神社を中心に集まる」機会を作ることで、コミュニティの結束を高める狙いがあります。

Q: 神職になるにはどのような資格や研修が必要ですか?

A: 一般的には神道系の大学や専門学校で所定の課程を修了するか、神社本庁の研修を受講し資格取得する方法があります。
最近はオンライン研修を取り入れる例も増え、働きながら神職を目指す人にとっても門戸が広がっています。

Q: 若手神職が海外向けに情報発信する理由は何ですか?

A: 外国人観光客が増加傾向にあるため、日本文化や神社をグローバルに紹介する必要性が高まっています。
海外からの参拝者向けに多言語対応を行い、文化交流や理解促進を目指しているのです。


⚜️ 神職インタビューの裏話

実際にインタビューをしてみると、若手神職は思いのほか「同世代の一般企業に勤める人たちと同じ悩み」を抱えていることがわかります。
たとえば、キャリアアップの悩みや組織内でのコミュニケーション方法、結婚や子育てとの両立など。
ただ、その延長に「神社という伝統をどう未来に繋げるか」という壮大なテーマが重なってくるのが特徴的です。


まとめ

若手神職は、悠久の歴史を持つ神社の伝統を守りながら、急速に変化する社会とどう向き合うかという大きな課題に取り組んでいます。
地域コミュニティの衰退やグローバル化、さらにはデジタル化の進展という複雑な時代背景の中で、彼らのチャレンジは避けては通れない道です。
伝統をただ受け継ぐだけでなく、新しいファンを獲得し、海外の方々にも神社の魅力を発信する——そんな多面的な役割を果たす若手神職こそ、神道文化の未来を担うキーパーソンだといえるでしょう。

私自身、SNS時代の神社参拝文化を研究してきた経験から、若手神職が持つエネルギーと柔軟な発想には大いに可能性を感じています。
これからも、彼らの活動を応援するとともに、読者の皆さんも身近な神社や若手神職に注目し、伝統と革新のドラマをぜひ体感してみてください。
いざ、神社へ。


関連サイト

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