はじめまして、美容業界専門のキャリアライターをしている小柳遥(こやなぎはるか)です。
エステティシャンとして7年現場に立ち、その後は美容業界特化の転職エージェントでキャリアアドバイザーを4年務めてきました。
このキャリアの中で、数えきれないほど受けてきた相談があります。
「子育てをしながらエステティシャンを続けられるでしょうか」。
独身の頃はバリバリ働けていた人ほど、出産を機にこの不安を強く抱く傾向があります。
「復帰したいけれど、シフト制の仕事に子どもを預けながら通えるのか自信がない」「時短勤務を希望したら、評価が下がるのではないか」。
実際に寄せられる声を挙げると、こうした具体的な不安がほとんどです。
結論から言うと、両立は可能です。
ただし「どのサロンで働くか」によって難易度がまったく変わります。
この記事では、両立を難しくしている業界特有の事情、両立できるかどうかを分ける具体的なポイント、収入やキャリアへの影響、実際に子育てをしながら現場に立つエステティシャンの実例まで、現場を知る立場から整理していきます。
転職相談の現場で実際に交わされてきたやり取りをもとにしているので、これから就職・転職・復職を考えている方の判断材料になれば幸いです。
目次
エステティシャンの仕事が子育てと両立しにくいと言われる理由
まず正直に伝えておきます。
エステティシャンという職業は、他の職種と比べて子育てとの両立のハードルがやや高い仕事です。
理由は主に3つあります。
施術中は抜けられないという業務特性
エステの施術は1回60分から90分程度、お客様の肌やボディに直接触れながら進みます。
デスクワークのように「ちょっと抜けて電話対応」ということができません。
保育園から「お子さんが熱を出しました」と連絡が入っても、施術中はすぐに折り返すことすら難しいのが実情です。
シフト制ゆえの土日出勤・不規則な休み
サロンの繁忙日は、多くの場合お客様が休みの土日です。
平日休みが基本になるため、保育園の行事や子どもの友達との予定と休みが合わせにくいという声もよく聞きます。
体力仕事というイメージ先行
立ち仕事に加えて、指先や腕を使うハンドトリートメントは想像以上に体力を消耗します。
「妊娠中や産後の体で続けられるのか」という不安を口にする方も少なくありません。
ここまで読むと「やっぱり無理なのでは」と感じるかもしれません。
ですが、実際にはこの3つのハードルを制度でカバーしているサロンも存在します。
両立できるかどうかは、業種の特性そのものではなく、勤務先の環境で決まるというのが私の見立てです。
実際、私が担当してきた転職希望者の中にも、出産を機に一度は離職を考えながら、勤務先を変えることで現場に戻れた方が何人もいます。
共通していたのは「今の職場が合わないだけで、エステという仕事自体を辞めたいわけではない」という声でした。
辞める前に、まずは働き方の選択肢を知ることが第一歩になります。
両立できるかどうかを分けるのは「制度」より「運用」
転職相談を受ける中で、私はいつも同じことを伝えています。
「制度の有無」だけでなく「制度が実際に使われているか」を見てください、と。
求人票に「時短勤務あり」と書いてあっても、実際には誰も使ったことがない制度というケースは珍しくありません。
両立の可否を見極めるには、次の3つの観点をチェックする必要があります。
時短勤務・時間単位の柔軟な勤務制度があるか
代表的なのは「1日6時間勤務」のような育児短時間勤務制度です。
加えて、数時間単位で遅出や早上がりができる制度、フレックスで休日を調整できる制度があると、送迎の負担が大きく変わります。
子どもの急な体調不良に対応できる休暇制度
看護休暇や残業免除制度が整っているかどうかも重要な指標です。
保育園からの呼び出しに対して、有給とは別に休める制度があるかないかで、働き続けられるかどうかが決まると言っても大げさではありません。
上司・同僚の理解と協力体制
これが最も見落とされがちなポイントです。
制度が整っていても、職場の空気として「時短勤務は肩身が狭い」という雰囲気があれば、長くは続けられません。
子育て中の先輩社員が実際に活躍しているかどうかは、面接や職場見学で必ず確認してほしいところです。
3つの観点を整理すると、次のようになります。
| チェックする観点 | 見るべきポイント | 確認方法の例 |
|---|---|---|
| 勤務時間の柔軟性 | 時短勤務・時間単位の遅出早上がりの有無 | 求人票・面接での質問 |
| 休暇制度 | 看護休暇・残業免除制度の有無と利用実績 | 面接・職場見学 |
| 職場の理解度 | 子育て中の社員が実際に活躍しているか | 職場見学・社員インタビュー記事 |
3つとも揃っているサロンほど、長く安心して働き続けられる傾向があります。
逆にひとつでも欠けていると、どこかのタイミングで無理が生じやすくなります。
知っておきたい、育児と仕事の両立を支える公的な制度
サロン独自の制度だけでなく、法律で保障されている仕組みも押さえておくと、転職先を選ぶ際の判断材料になります。
育児短時間勤務制度とは
育児・介護休業法では、3歳未満の子を養育する労働者に対して、企業が原則1日6時間の短時間勤務制度を設けることを義務づけています。
2025年4月からは、対象となる代替措置にテレワークが加わり、2歳未満の子を養育する被保険者には、短時間勤務中の賃金の10%相当額を給付する「育児時短就業給付金」も新設されました。
詳しい制度内容は厚生労働省の育児休業制度特設サイトで確認できます。
「くるみん認定」企業という見極め方
もうひとつ知っておきたいのが「くるみん認定」です。
次世代育成支援対策推進法に基づき、仕事と子育ての両立支援に積極的に取り組む企業を厚生労働大臣が認定する制度で、認定を受けた企業は求人広告などにマークを使用できます。
制度の詳細は厚生労働省の次世代育成支援対策推進法のページにまとまっています。
求人を比較するとき、このマークの有無をひとつの判断材料にするのも手です。
両立支援に力を入れるサロンが増えている背景
エステティシャンは技術職です。
一人前になるまでに一定の年数がかかるからこそ、出産や育児を理由に人材が離職してしまうことは、サロン側にとっても大きな損失になります。
だからこそ近年は、時短勤務や休暇制度の拡充に積極的に取り組む企業が増えてきています。
求人を選ぶ際は、制度の充実度だけでなく「なぜその制度に力を入れているのか」という背景まで意識してみると、職場選びの視野が広がります。
実際に子育てと両立しているエステティシャンの実例
制度の話だけでは実感が湧きにくいと思うので、実際の事例を紹介します。
たかの友梨ビューティクリニックのエステティシャン、井上桃子さんは2009年3月16日に入社し、出産・育児休業を経て現場に復帰しました。
勤務は6時間の育児ショートタイムで、保育園の送迎や家事との両立を実現しています。
復帰直後は、保育園から「お迎えに来てください」という連絡が頻繁に入ったそうですが、看護休暇や有給休暇を使って対応できたと振り返っています。
残業免除制度もあり、お迎えの時間に間に合う点も安心材料になったといいます。
何より心強かったのは、上司や職場の理解と協力があったことです。
不安に思う気持ちに周囲が寄り添ってくれる環境かどうかは、数字には表れない大切な要素です。
たかの友梨ビューティクリニックは1978年創業、エステ専門誌のオリジナルアワード「日本美容企業大賞2025」でHR部門・製品開発部門・顧客満足度部門の3部門を受賞しています。
特に働きやすさや人材育成を評価するHR部門での受賞は、こうした社員の声が積み重なった結果とも言えます。
育児ショートタイムや看護休暇、残業免除制度が実際にどう機能しているのか、たかの友梨で働く社員のインタビューや職場環境で詳しく紹介されています。
制度を検討する際の参考にしてみてください。
時短勤務で収入やキャリアはどうなるのか
制度が整っていることは分かっても、多くの方が気にするのは収入とキャリアの行方です。
この2点についても、正直にお話しします。
時短勤務中の収入の考え方
エステティシャンの給与は、基本給に加えて技術量や資格取得、サロン目標の達成度に応じた手当が上乗せされる仕組みを採用しているサロンが少なくありません。
勤務時間が短くなればその分の基本給は下がりますが、技術給や達成賞といった評価型の手当は、時短勤務中でも実力次第で積み上げられる場合があります。
「時短だから昇給が止まる」と思い込まず、給与体系そのものが技術や実績を評価する仕組みになっているかを面接で確認しておくと安心です。
復帰後のキャリアアップは可能か
「時短勤務を選んだらキャリアは頭打ちになるのでは」という相談もよく受けます。
実際には、未経験からスタートして店長やリーダーへとステップアップした例、講師として技術指導にあたる例、独立開業に踏み出す例など、キャリアの選択肢は勤務時間の長さだけで決まるものではありません。
大切なのは、時短勤務であっても技術力や実績を正しく評価してくれる仕組みが職場にあるかどうかです。
評価制度と昇進ルートが明確なサロンであれば、育児期を経てからのキャリアアップも十分に狙えます。
子育てと両立できるサロンかどうかを見極める7つのチェックリスト
最後に、転職・復職先を選ぶときに確認してほしいポイントをまとめます。
- 育児短時間勤務(時短勤務)の制度があり、実際に利用している社員がいるか
- 数時間単位の遅出・早上がりなど、柔軟な勤務時間の調整制度があるか
- 看護休暇や残業免除制度が整っているか
- 子どもの発熱などの急な休みに、周囲がどう対応してくれるか具体例を聞けるか
- 転勤の有無や、地域限定で働ける制度(地域社員制度など)があるか
- 一度退職しても再就職しやすい制度(カムバック採用など)があるか
- 面接や職場見学で、子育て中の社員が実際に活躍している様子を確認できるか
これらは求人票だけでは分からないことがほとんどです。
面接や職場見学の機会に、遠慮せず具体的に質問することをおすすめします。
面接でそのまま使える質問例
質問の切り出し方が分からないという相談も多いので、そのまま使える例文を紹介します。
- 「時短勤務を実際に利用している社員の方はいらっしゃいますか」
- 「子どもの急な発熱で早退・欠勤になった場合、どのような制度で対応していますか」
- 「時短勤務中の給与や評価の仕組みについて教えていただけますか」
- 「育児と両立しながらキャリアアップした方の事例があれば教えてください」
これらの質問は、面接官に対して失礼にはあたりません。
むしろ長く働く意欲の表れとして受け取られることがほとんどなので、遠慮せずに聞いてみてください。
まとめ
エステティシャンという仕事は、施術中に抜けられない、シフト制で休みが不規則になりやすいという特性から、子育てとの両立が難しいと言われがちです。
しかし実際には、時短勤務や看護休暇、残業免除制度が整い、それが実際に運用されているサロンであれば、無理なく両立している先輩はたくさんいます。
大切なのは、制度の有無だけでなく「実際に使われているか」「周囲の理解があるか」を見極めることです。
今回紹介したチェックリストを参考に、自分に合った働き方ができる職場を探してみてください。



