「耐震診断」と聞くと、なんだか専門的で、壁の中や家の土台といった、普段見えない場所ばかりをチェックするものだと思っていませんか。

もちろん、それらも非常に重要なポイントです。
しかし実は、私たちが毎日目にしている「意外な場所」にも、地震から家族を守るための大切なヒントが隠されているんです。

こんにちは、住宅リフォームプランナーの小川美佳です。
私自身も、築35年になる実家の耐震診断に立ち会ったとき、「え、そんなところまで見るの!?」と驚いた経験があります。
今回は、そんな私の経験も踏まえながら、子育て中の主婦、そして住まいのプロという両方の目線で、専門家がチェックする「意外な箇所」ベスト5をご紹介します。

この記事を読み終える頃には、きっとご自宅の見る目が少し変わって、「うちも一度、専門家に見てもらおうかな」と前向きな一歩を踏み出せるはずですよ。

耐震診断ってどんなことをするの?

基本的な診断の流れとチェック対象

まず、耐震診断がどんなものか簡単にご説明しますね。
専門家が行う診断では、建物の設計図と実際の建物の状況を照らし合わせながら、地震に対する強度を評価します。
現地調査では、専用の機材を使って壁の量や配置、基礎の状態などを細かく調べていくのが一般的です。

一般的に注目されるポイント(壁・基礎・屋根など)

多くの方がイメージされるのは、まさにこの部分だと思います。
壁にひび割れはないか、基礎に鉄筋は入っているか、屋根は重すぎないか、といった点が主なチェック項目です。
これらは建物の骨格に関わる部分なので、当然ながら耐震性を左右する最重要ポイントと言えます。

見逃されがちな“暮らしのリアル”との関係

しかし、本当の安全性は、建物そのものの強さだけで決まるわけではありません
地震が起きたとき、私たちは家の中で生活しています。
だからこそ、専門家は「もし今、ここで大きな揺れが来たらどうなるか?」という、私たちの“暮らしのリアル”に寄り添った視点でもチェックを行っているのです。
その視点こそが、今回ご紹介する「意外なチェック箇所」につながっていきます。

見逃しがち!耐震診断でチェックされる意外な箇所ベスト5

それでは、いよいよ本題です。
プロが注目する、でも私たちが見逃しがちなポイントをランキング形式で見ていきましょう。

第5位:玄関ドアの立て付け

毎日使う玄関ドア、最近なんだか開け閉めしにくくなっていませんか。
「ちょっと調子が悪いのかな」くらいに思ってしまいがちですが、実はこれ、建物が少しずつ歪んできているサインかもしれません。

大きな地震で建物が歪むと、ドア枠も変形してドアが開かなくなることがあります。
玄関は、いざという時の大切な避難経路です。
その唯一の出口が塞がれてしまう危険性を、専門家は見逃さないのです。

第4位:家具の配置と固定状況

「耐震診断って、建物の話でしょ?」と思われている方にこそ、知ってほしいポイントです。
実は、近年の大地震による負傷者の3割から5割は、家具類の転倒や落下、移動が原因だと言われています。

特に、小さなお子さんやご高齢の方がいるご家庭では、背の高いタンスや本棚が凶器に変わる可能性があります。
寝室や、人の出入りが多い場所に大きな家具が置かれていないか、そしてそれらがきちんと壁に固定されているか。
これも、家族の命を守るための重要なチェック項目なのです。

第3位:窓サッシとガラスの種類

リビングの大きな窓は、部屋を明るくしてくれて気持ちが良いですよね。
でも、そのガラスがどんな種類か、意識したことはありますか。

古いタイプのガラスは、割れると鋭い破片になって飛び散るため、非常に危険です。
診断では、ガラスの種類だけでなく、サッシに歪みがないかもチェックします。
もしもの時のために、ガラスに飛散防止フィルムを貼るだけでも、安全性は格段に向上します。
最近のフィルムはUVカット機能付きのものもあって、家具の日焼け防止にもなるんですよ。

第2位:外まわりのブロック塀や物置

ついつい見過ごしがちなのが、お家の外回りです。
特に、古いブロック塀は注意が必要です。
建築基準法で定められた高さや、倒壊を防ぐための「控え壁」がない塀は、地震の揺れで簡単に倒れてしまう危険があります。

倒れたブロック塀が避難経路を塞いだり、万が一、通行人や隣家の方に被害を与えてしまったりする可能性もゼロではありません。
敷地内の物置も同様で、基礎がしっかりしていないと転倒の恐れがあります。
お家の安全は、敷地全体で考えることが大切なんですね。

第1位:天井裏や床下の状態

そして、最も意外で、かつ最も重要なのが、普段まったく目にすることのない天井裏や床下です。
私も実家の診断で初めて天井裏を覗きましたが、そこには家の健康状態を示すヒントがたくさん詰まっていました。

例えば、雨漏りのシミや木材の腐食。
これらは、建物の強度を直接的に低下させる原因になります。
特に怖いのがシロアリの被害で、柱や土台がスカスカにされてしまうと、耐震性は著しく損なわれます。
湿気の多さやカビの発生も、木材を劣化させるサインです。
見えない場所にこそ、家の弱点が隠れていることが多いのです。

チェックリストでわかる!我が家の“意外な危険ゾーン”

専門家を呼ぶ前に、まずはご家庭でできることから始めてみませんか。
簡単なセルフチェックで、我が家のリスクを把握しておきましょう。

家庭でできる簡易セルフチェック

  1. 玄関や室内のドアはスムーズに開閉できるか?
  2. 壁や基礎に、幅の広いひび割れはないか?
  3. 雨漏りのシミや、壁紙の浮きはないか?
  4. 背の高い家具は、壁に固定されているか?
  5. ブロック塀にひび割れや傾きはないか?

日本建築防災協会が公開している「誰でもできるわが家の耐震診断」も、とても参考になりますよ。

家族構成に合わせた確認ポイント

専門家に依頼する前に知っておきたいこと

セルフチェックで気になる点が見つかったら、専門家への相談を検討するタイミングかもしれません。
その際は、お住まいの自治体で耐震診断の補助金制度がないか、ぜひ調べてみてください。
多くの自治体で、費用の一部を助成する制度が用意されています。

どう活かす?耐震診断の結果の読み解き方

単なる“数値”ではなく“暮らし”の目線で解釈する

診断結果は「評点」という数値で示されることが多いですが、その数字に一喜一憂する必要はありません。
大切なのは、その結果が「私たちの暮らしにとって、どんなリスクを意味するのか」を理解することです。
例えば、「この壁を補強すれば、子ども部屋の安全性が格段に上がる」といったように、家族の顔を思い浮かべながら対策を考えることが重要です。

費用対効果を考えた優先順位づけ

耐震リフォームには費用がかかります。
だからこそ、どこから手をつけるべきか、優先順位を考えることが不可欠です。
「まずは1階の寝室だけ」「倒壊リスクの高いブロック塀から」など、診断結果と予算を照らし合わせながら、最も効果的な方法を専門家と一緒に探していきましょう。

例えば、長年の実績がある耐震診断の専門家集団である株式会社T.D.Sのような事務所に相談してみるのも一つの方法です。
実際に依頼した人の口コミや評判を参考にしながら、ご自身の家に合った信頼できるパートナーを見つけることが、後悔しないリフォームの鍵となります。

不安を安心に変える行動リスト

  1. 診断結果を家族で共有する
  2. 自治体の補助金制度を調べる
  3. リフォーム会社に相談し、見積もりを取る
  4. まずは家具の固定など、自分でできることから始める

一つひとつ行動することで、漠然とした不安は「具体的な安心」へと変わっていきます。

まとめ

いかがでしたでしょうか。
耐震診断でチェックされる意外な箇所をご紹介しました。

「そんなところも!?」という驚きが、ご自宅の安全を見直すきっかけになれば、これほど嬉しいことはありません。
地震への備えは、特別なことではありません。
日常の暮らしの中にある、ちょっとした気づきや一手間が、あなたとあなたの大切な家族を守る第一歩になります。

ぜひこの機会に、ご家族と一緒に我が家を見つめ直し、安心できる住まいづくりを目指していきましょう。

参考文献

家具類の転倒・落下・移動防止対策 – 消防防災博物館