自動車電装部品メーカーの生産技術部で、22年ほど樹脂の封止や接着の工程を担当してきた三上です。
いまは中小の工場で、工程改善の相談に乗っています。
2液型のディスペンサーを入れようとしている方から、よく聞かれる質問があります。
「比率固定式と比率可変式、どちらを買えばいいのか」というものです。
私はいつも、装置のカタログより先に、流す材料のほうを見てくださいと答えています。
固定式と可変式は何が違うのか
違いは、主剤と硬化剤を混ぜる割合を、使いながら変えられるかどうかです。
定量吐出ディスペンサの専門メーカーであるナカリキッドコントロールは、「比率固定式」「比率可変式」と名前を付けた機種を並べて扱っています。
公式ページの記述を比べると、次のようになります。
| 項目 | 比率固定式 HR-50 | 比率可変式 ツインフローVR-50 |
|---|---|---|
| 公式ページの説明 | シンプルな構造で低価格化。故障が少なくメンテナンスも容易 | 広範囲な混合比率が可能 |
| 適応比率範囲 | 100:100〜100:4 | 100:100〜100:1 |
| ミキサ | スタティックミキサ | 電動ロータリミキサ |
固定式の欄にも比率の範囲が載っています。
自分の材料の比率で使えるかどうかは、メーカーに確かめるのが確実です。
材料が決まっているなら固定式で足ります
2液型の材料は、混ぜる割合を材料メーカーが決めています。
岐阜県産業技術総合センターの研究報告でも、二液型接着剤は塗布前に定められた比率で均一に混合する必要があると述べられています。
材料によっては、比率を動かすこと自体が認められていません。
信越化学工業の型取り用液状シリコーンゴムのカタログは、付加タイプについて「硬化剤の添加量は変えることはできない」と書いています。
1種類の材料を、同じ比率で毎日流す量産ラインなら、比率を変える機能の出番はまずありません。
私がいた工場でも、ECU基板のポッティングは何年も同じ樹脂でした。
こうした現場では、構造が単純で壊れにくい固定式のほうが扱いやすいと思います。
可変式が役に立つのはこんな現場です
同じカタログには、縮合タイプについて「硬化剤の添加量を増すと速くなり、減らすと遅くなる」ともあります。
比率を少し動かして硬化時間を調整することが、材料の側で認められているわけです。
可変式を検討したほうがよいのは、次のような現場です。
- 比率の違う材料を、1台で切り替えて使う
- 試作や評価が多く、材料がよく変わる
- 比率で硬化時間を調整したい材料を使っている
もう一つ、見落としやすい点があります。
材料の比率は重量比で示されることがあり、信越化学のエレクトロニクス用液状シリコーンゴムのカタログも「比率は全て重量比です」と明記しています。
一方、容積で量るタイプのディスペンサーは体積で比率を合わせます。
主剤と硬化剤の比重が違えば換算が要るので、データシートの数字をそのまま装置に入れないよう気をつけてください。
迷ったら、材料を持ち込んで試す
固定か可変かで迷ったら、手元の材料で実際に吐出してみるのがいちばん早いです。
ナカリキッドコントロールにはテストルームがあり、実機でのテストを申し込めます。
商品選定の申し込みフォームでは、材料の粘度や配合比率、比重、ポットライフなどを記入して機種の提案を受けられます。
どんな機種があるかは、2液を混ぜて塗布するディスペンサーの製品一覧で確認できます。
まとめ
- 材料が1種類で比率も決まっているなら、固定式で足りる
- 材料の切り替えや、比率での硬化調整があるなら可変式を検討する
- 材料側は重量比、装置側は体積比のことがあるので換算に注意する
装置選びは、自分の工場で何を流すのかを書き出すところから始まります。
材料のデータシートをそろえてから、メーカーに相談してみてください。

